AIコーディング:プログラミング未経験でも使える具体的な手順
AIコーディングは学校の授業のようなものではありません。未経験でも試せる具体的な手順、実例、そして出力をそのまま実行してはいけない理由をまとめます。
「AIコーディング」と聞くと難しそうに感じますが、実務での中身はシンプルです。ChatGPTやClaudeのようなモデルに、Excelの数式や小さなマクロ、短いスクリプトといった、これまで自分で書いていたコードを代わりに書いてもらうことです。自分でAIモデルを一から作ることとはまったく別の話で、ほとんどのオフィス作業ではそこまで必要ありません。
落とし穴は文章を頼むときと同じです。「表を整理するスクリプトを書いて」とだけ頼むと、あなたの表を見たことがないモデルは、当たり障りのない一般的なコードを返してきます。列の名前も、実際にやりたいことも知らないからです。
実務で向いている場面
「コード」と名が付く作業すべてに向いているわけではありません。すでに作業が小さく、繰り返し発生し、結果を確認しやすいものが一番相性がいいです。
- ExcelやGoogleスプレッドシートで、毎回同じ整理作業をするマクロ:重複行の削除、日付表記の統一、列の単位変換など。
- ファイルを決まった規則で名前変更・整理するスクリプト。毎週手作業でやっていたものを一度作れば繰り返し使える。
- すでに使っている2つのツールをつなぐ短いコード。たとえばフォームの回答を自動で表に追加するなど。
向いていないのは、ミスがすぐには気づかれず、あとから大きな損害になる場面です。顧客データを扱う本番システムや、確認なしで自動的にメールを送信・データを削除するような処理は避けるべきです。
AIコーディング支援には、コードを打っている途中に候補を出す自動補完型、作業内容を文章で説明すると完成したコードを返すチャット型、大きな目標を渡すと複数の手順を自分で進める自律エージェント型があります。単発のオフィス作業なら、具体的に説明すればまとめて返してくれるチャット型で十分です。
具体例:最初から最後まで
多くの職場で月に一度は発生する作業を例にします。CRMから出力した名簿を報告書に使う前に整理する作業です。重複行を削除し、日付の表記を統一し、金額の列を文字列から数値に直す必要があります。
最初の頼み方はたいてい失敗します。「表を整理するマクロを書いて」では、存在しない表に向けたコードが返ってきます。うまくいくのは、元の状態を具体的に伝えたときです。「日付、担当者、金額という列を持つGoogleスプレッドシートがあります。日付と担当者が同じ行を重複として削除し、日付を『年/月/日』の形式に統一し、金額を文字列ではなく数値として保存するApps Scriptを書いてください。各手順に短い日本語のコメントを付けてください。」
これで最初の下書きとしては十分ですが、完成品ではありません。列の並び順や空欄セルの扱いが期待と違うことがよくあるため、本番データではなく、わざと汚くしたテスト用コピーで確認してから使います。
貼り付けに特別な開発環境は不要です。Googleスプレッドシートなら「拡張機能」からApps Scriptエディタを開いて貼り付け、再生ボタンで実行します。Excelなら「開発」タブの「Visual Basic」→「挿入」→「標準モジュール」に貼り付け、「マクロ」から実行します。初回実行時に権限の確認が出ますが、正常な動作でエラーではありません。
出力をそのまま実行してはいけない理由
モデルはコードについても、文章と同じくらい自信を持って間違えます。存在しない関数名や、実際にはもう使われていない古い書き方が、タイプミスのようには見えず、もっともらしい正しいコードのように見えることがあります。実行してエラーになる場合はまだ気づきやすいですが、エラーも出さずに実行できてしまい、間違った結果を静かに返すこともあります。
エラーで止まるコードはすぐに気づけます。危険なのは、エラーも出さずに動いてしまい、それでも間違った結果を返すコードです。
この「もっともらしいが間違っている」度合いがどこまで縮んでいるかは、AI Indexが毎年測定しています。こうしたスキルを持つ人材への賃金プレミアムは、PwC AI Jobs Barometerが世界の求人データから測定しています。だからこそ、正解が分かっているテストデータで確認する手順は省略できません。それが時短と、間違いを積み重ねることの分かれ目になります。
もう一つの注意点は、コードではなく渡すデータです。実在する顧客名や給与情報を「動作確認のため」に公開のチャット画面へ貼り付けるべきではありません。同じ列構成で架空の値を入れたコピーで代用します。
こうした作業が技術的にどこまで自動化できるかは、経済産業省がDX関連の調査で継続的に扱っています。企業のIT人材やデジタル化の実態は、IPA(情報処理推進機構)がDX白書として毎年公表しています。OECDのAI原則は、文章であれコードであれ、人が最終的な確認責任を持つことをはっきりと原則に挙げています。
月曜日に試すこと
- すでに手作業で繰り返している作業を一つ選ぶ。練習のためだけの例ではなく、実際に使うもの。
- モデルに、扱う列の名前やファイル名を具体的に伝える。欲しい結果だけを伝えない。
- 各手順に短いコメントを付けてもらい、実行前にコードの中身を自分で追えるようにする。
- 正解が分かっているテスト用のコピーで先に確認し、そのあとで本番のデータに使う。
具体的に頼むコツはChatGPTの使い方(日本語)、AIの得意・不得意の整理はAIでできることで扱っています。ツールを使いこなすことと、AIモデルを実際に作る仕事は別物で、その違いはAIエンジニアとはで扱っています。出力を確認してから使う習慣そのものは、AIの使い方が議事録を例に詳しく説明しています。
こうした「具体的に頼む」「出力を実行前に確認する」という2つの力は、Coursiumがスマホの短いレッスンで練習できるようにしています。AIの一歩先へ、実際の仕事に近い練習から始めてみてください。詳しくはCoursiumについて。