Muse Codeの使い方:Metaのターミナル型コーディングエージェントを試す前に知ること
Muse Codeの使い方を、インストールから最初の修正まで手順で説明します。料金プラン、日本からの利用可否、会社のコードを渡す前に確認することもまとめます。
Muse Codeは、Metaが提供するターミナル型のコーディングエージェントです。プロジェクトのフォルダでコードを読み、計画を立て、作業を複数のサブエージェントに分けて進めます。Metaの開発者ブログによると、Muse Codeは2026年8月31日にベータを終え、月額プランと新しい機能が加わりました。この記事では、インストールから最初の修正を任せるまでの手順と、日本から試す前に確認しておきたい点をまとめます。
先に一つ正直に書いておきます。日本から問題なく登録して支払いまでできるかは、公式ページだけでは確認できません。Meta Model APIのページは「expanded global access」付きの公開プレビューと説明していますが、対象国の一覧は載っていません。日本が含まれるとも除外されるとも書かれていないので、アカウントを作る段階で自分で確かめる必要があります。
名前が似ている個人向けエージェントアプリのMuseや、モデルそのもののMuse Sparkとの関係は、Muse Sparkとはで整理しています。Muse Codeの中で動くのはモデルのほうで、MetaはMuse Spark 1.3の最大推論設定がMuse CodeとMeta Model APIで使えると発表しています。
Muse Codeでできること
- 計画:組み込みの/planで、コードベースを読んだうえでの計画を作ります。実行の前に承認が必要なので、いきなりファイルを書き換えられることはありません。
- 並列作業:サブエージェントがそれぞれ別のgit worktreeで作業し、親のエージェントがその様子を見ています。
- 記録:サブエージェントの動き、ツールの呼び出し、途中で出した指示、キャンセルがすべて記録され、あとから再生できます。
- 8月31日に加わった機能:セッション間のメッセージ、サブエージェントのチームを調整するWorkflow、会話を巻き戻すRewind、開発者プレビューのTypeScript SDKです。
性能について、Metaは1.3では1.2よりツール呼び出しが約20%、トークン数が約25%少なくなったとしています。ITmedia AI+は、DeepSWE v1.1で75.4というスコアを伝えています。Artificial Analysisは、同社の指数を1タスク実行するコストを、Muse Spark 1.3(xhigh)で0.55ドルと算出しました。
ただし、ベンチマークが測っているのは用意されたテスト課題です。自分の会社の古いコードや、独自の命名規則にどこまで合うかは、実際に小さく試すまで分かりません。4月の最初の発表では、Meta自身が長時間のエージェント処理やコーディングの流れに課題があると認めていました。その後の改善は大きいものの、万能になったわけではない、という前提で使うのが安全です。
インストールと最初の起動
公式に案内されている環境はmacOSとLinuxです。Windowsで使いたい場合は、始める前に対応状況を確認してください。インストールは、ターミナルで次の1行を実行します。
curl -fsSL https://dev.meta.ai/install.sh | bash
インターネットから取得したスクリプトをそのまま実行する形なので、気になる場合は先にファイルとして保存し、中身を読んでから実行しても構いません。インストールが終わったら、Meta Model APIのアカウントでサインインします。認証はブラウザで行います。
次に、作業したいプロジェクトのフォルダに移動して起動します。
cd プロジェクトのフォルダ
muse
作業の途中でターミナルを閉じてしまった場合は、次のコマンドでセッションを再開できます。会話を一つ前に戻したいときは、Escキーを2回押すとRewindが動きます。
muse resume
具体例:小さな修正を1つ任せる
最初の作業は、失敗しても困らない小さなものを選びます。たとえば、社内向けの管理画面で日付の表示が「2026-09-13」と「2026/9/13」の2種類混ざっている、という修正です。範囲がはっきりしていて、結果を目で確かめやすいからです。
まず/planを使い、書き換えではなく計画だけを頼みます。頼む内容は、ぼんやりした目標ではなく、場所と条件を具体的に書きます。たとえば次のような依頼文です。
管理画面の日付表示を「2026/9/13」の形式に統一したい。表示部分だけを変更し、データベースに保存する形式は変えないこと。変更するファイルの一覧と、確認に使うテストを先に示してください。
返ってきた計画では、変更するファイルの数と場所を読みます。日付の保存処理やAPIのファイルまで含まれていたら、承認せずに範囲を狭めるよう伝え直します。計画に納得してから承認すると、サブエージェントが作業を始めます。
TechCrunchによると、Metaは作業中の手元のコピーには手を付けないと説明しています。それでも、取り込む前に差分を自分で読む手順は省けません。
git diff
エラーを出さずに動くのに結果が間違っているコードは、エージェントでも普通に出てきます。この点はAIコーディングの手順でも、テスト用のデータで先に確かめる方法として詳しく扱っています。
料金:どのプランから始めるか
2026年9月時点の月額プランは次の3つで、いずれもドル建ての米国価格です。
- Everyday Usageは月5ドルで、5時間ごとに10〜50プロンプトが目安です。
- High Usageは月15ドルで、Everyday Usageの3倍の量です。
- Power Usageは月50ドルで、Everyday Usageの10倍の量です。
円での価格は表示されていないので、実際の支払額は為替で変わります。Metaは、月額プランのほうが従量課金より安く済むと説明しています。まず一番安いプランで試し、上限に何度も当たるようなら上げる、という順番で十分です。
APIの従量課金を使う場合、Muse Spark 1.3の標準料金は米国価格で100万トークンあたり入力1.25ドル、出力4.25ドルです。入力0.10ドルのcontributor tierもありますが、こちらはプロンプトがMetaの製品改善に使われます。
比較対象になりやすいのはAnthropicのClaude Codeで、Claude Codeは米国価格で月20ドルのProプランに含まれています。料金全体の整理はMuse Sparkの料金に、Claudeとの違いはMuse SparkとClaudeの比較にまとめています。
会社のコードを渡す前に確認すること
個人の練習用リポジトリなら気軽に試せますが、仕事のコードは話が別です。個人情報保護委員会の注意喚起は、事業者が個人情報を含むプロンプトを入力する場合、利用目的の範囲内かを確認し、入力したデータが機械学習に使われないことを十分確認するよう求めています。テストデータやログに実在の顧客情報が混ざっているリポジトリは、この点で注意が必要です。
総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン第1.2版は、AIエージェントについて、適切な権限設定、人の判断の介在、動作ログの定期的な確認を重視しています。Muse Codeの計画承認や作業記録は、この考え方と相性のよい仕組みです。ただし、仕組みがあることと、実際に読んで確認することは別です。
- 社内規程で、外部のAIサービスにソースコードを送ってよいかを確認する。
- 契約しているのが月額プラン、標準の従量課金、contributor tierのどれかを確認する。contributor tierではプロンプトが製品改善に使われる。
- リポジトリのテストデータや設定ファイルに、実在の個人情報や認証情報が入っていないかを確認する。
- 変更は必ずブランチで受け取り、差分とテストの結果を人が確認してから取り込む。
- 作業記録を残し、何を任せて何が変わったかを定期的に見返す。
エージェントにどこまで権限を渡すかという考え方は、AIエージェントと個人情報でコード以外の場面も含めて扱っています。
誰に向いているか
Muse Codeは、ターミナルとgitに慣れている人向けの道具です。総務省の情報通信白書の概要では、日本でプログラムコードの生成AIを使ったことがある人は7.0%にとどまります。まだ少数派の使い方なので、周りに聞ける人がいない前提で、小さく試すほうが安心です。
プログラミングの経験がほとんどない場合は、いきなりエージェントに任せるより、チャット型のAIに短いコードを書いてもらうところから始めるほうが、何が起きているかを追いやすいです。遊びながら練習したいなら、AIゲームの作り方が同じ確認の流れをブラウザゲームで試せる内容になっています。ツールを使いこなすことと、AIを作る仕事に就くことの違いはAIエンジニアとはで、複数のAIをどう選ぶかはAI比較で扱っています。
日本から契約できるかが分からないうちは、無理に回避策を探す必要はありません。すでに使えるAIで「計画を読む」「差分を確かめる」習慣を身につけておけば、どのツールに移っても役に立ちます。
CoursiumはiPhone向けのアプリで、仕事でAIを使うための具体的な頼み方や、出力を確かめる方法を短いレッスンで学べます。App Storeで提供していて、詳しくはCoursiumのトップページで紹介しています。