資料作成AI:構成と文章は任せて、数字は自分で守る
資料作成AIはスライドの骨子と文章を速く作れますが、完成したファイルを渡してくれるわけではありません。向いている作業と、公開前に照合すべき点をまとめます。
「資料作成AI」と検索する人の多くは、社内向けの提案書や報告資料を、AIに骨子から手伝ってほしいと考えています。正直な点から始めます。今のAIチャットは、完成したパワーポイントのファイルを直接作ってくれるわけではありません。できるのは、スライドの構成案と、各スライドに載せる文章の下書きまでです。実際のファイルに文字を配置し、図やグラフを整えるのは、依然として自分の作業として残ります。
AIが向いている作業
- 箇条書きのメモや会議の議事録から、スライド構成の叩き台を作る。
- 長い報告書を、1枚のスライドに収まる短い文章に圧縮する。
- 同じ内容を、社内向けと取引先向けで言い回しを変えた2通りの下書きにする。
- すでにある数字や事例を、スライドごとに短い見出しと説明文の形に整える。
向いていないのは、根拠となる数字や事例をAIに考えさせることです。売上実績や市場規模のような数字を渡さずに「説得力のある資料を作って」と頼むと、もっともらしい数字で埋めた下書きが返ってくることがあります。
具体的な手順
- 資料の目的と、誰に何を伝えたいかを自分で先に決める。AIに目的から考えさせると、当たり障りのない一般論になりやすい。
- 実際の数字やメモを渡してから、スライドごとの構成案を作らせる。渡す情報がなければ、AIはそれらしい数字で埋めてしまう。
- スライド1枚あたりの文字数の上限を指定する。指定しないと、読み上げ原稿のような長い文章が返ってくることが多い。
- 出来上がった構成案をパワーポイントやスライドに自分で流し込み、各スライドの数字を元のデータと一つずつ照合する。
具体例:最初から最後まで
四半期の営業報告資料を例にします。頼み方が弱い場合:「四半期の営業報告資料を作って」。返ってくるのは、どこかで見たような一般的な構成と、出どころの分からない数字らしきものが混じった下書きです。
頼み方を整えた場合:「以下は今四半期の実績データです。[データを貼る]。このデータだけを使って、5枚構成の営業報告スライドの見出しと本文案を作ってください。1枚あたり本文は80字以内、データにない数字は使わないでください。」渡した情報の範囲で書かせることで、あとから照合すべき箇所が「渡したデータと一致しているか」だけに絞られます。
読みやすい構成案は危険ではありません。空欄が目立つからです。危険なのは、スライドとして滑らかに読めるのに、数字の出どころが実は存在しない下書きです。
なぜ数字だけは自分で守る必要があるのか
これらのモデルは、間違った数字でも、正しい数字と同じくらい自信を持って書きます。これは一時的な不具合ではなく、OECDのAI指針でも管理すべきリスクとして扱われている性質です。構成や言い回しはAIに任せてかまいませんが、数字や固有名詞は元のデータと照らし合わせるまで資料に載せないことです。モデルの事実性がどこまで伸びているかは、Stanford AI Indexが毎年測定していますが、伸びているからといって照合を省略していい理由にはなりません。
もう一つ見落としやすい点があります。スライド1枚あたりの文字数を指定しないと、口頭で読み上げる原稿のような長い文章が返ってくることが多く、そのままスライドに貼ると文字があふれます。文字数の上限を先に伝えることが、資料として使える下書きになるかどうかの分かれ目です。
日本国内での広がり
日本国内でのAI利用の広がりは、総務省の情報通信白書が毎年、国際比較を含めて公表しています。企業のデジタル化や生成AIの活用状況については、IPA(情報処理推進機構)がDX白書として継続的に調査しています。
この照合の手間を惜しまないことが、結果的に評価される働き方につながることは、PwC AI Jobs Barometerが示す、AIスキルを持つ人材への賃金プレミアムからも読み取れます。
月曜日に試すこと
- 次に作る資料の目的と、伝えたい結論を先に自分で書き出す。
- 実際の数字やメモをAIに渡してから、構成案を作らせる。
- スライド1枚あたりの文字数の上限を指定する。
- 出来上がった構成案をスライドに流し込んでから、数字を元のデータと一つずつ照合する。
出力を鵜呑みにしないという基本の考え方は、AIの使い方で詳しく扱っています。ブログ記事のように文章中心の下書きを作る場合の同じ照合の考え方は、AIブログの書き方にまとめています。資料に載せる最新情報を調べる段階で、ChatGPTとBingのどちらを使うか迷う場合は、ChatGPTとBingの違いが情報源のリンクを軸に整理しています。複数の情報源を横断してレポートにまとめたい場合は、ディープAI(Deep Research)とはが出典つきで下書きを作る方法を扱っています。日本語ならではの頼み方のコツは、ChatGPTの使い方(日本語)で詳しく扱っています。
こうした「具体的に頼む」「出力を正しく確認する」という2つの力は、Coursiumがスマホの短いレッスンで練習できるようにしています。AIの一歩先へ、実際の仕事に近い練習から始めてみてください。詳しくはCoursiumについて。