Recursive Flint 日本でも使える:ノートPCで動く無料コーディングAI
Recursive Flintは日本でも制限なく使えるオープンなコーディングモデルです。Apache 2.0、ローカル実行、必要なPC、個人情報の扱い、そして限界を整理します。
先に結論から。Recursive Flintは日本でもそのまま使えます。AI研究企業のRecursiveが2026年10月21日に公開したコーディング用のモデルで、重みはApache 2.0ライセンスで無料公開されています。ライセンスにも発表にも、国や地域の制限は書かれていません。Hugging Faceからダウンロードして、自分のパソコンで動かす形です。
この記事では、Flintとは何か、動かすのに何が必要か、ローカルで動かすことがデータの扱いにどう効くか、そして何ができないかを順に整理します。
Flintとは何か、何ではないか
Flintはプログラミング作業に特化した言語モデルです。アプリでも、雑談向けのチャットボットでもありません。モデルカードによると、パラメータは全体で398億、そのうち1トークンごとに動くのは約25億だけです。この「Mixture of Experts」という作りのおかげで、普通のパソコンでも速く動きます。想定している用途は、コードベースを調べる、バグを直す、機能を足す、テストを書くといったコーディングエージェントの仕事です。扱えるのはテキストだけで、画像は読めません。
Recursiveは、Salesforceで主任科学者を務めたリチャード・ソーチャー氏が率いる新しい研究企業です。今回話題になっているのは、Flintの開発の大部分を自社のAIが手伝ったという主張です。これについては後で触れます。
動かすのに必要なもの
元のモデルは約80GBあり、モデルカードではデータセンター向けのGPUが前提になっています。ノートPC向けには圧縮版が用意されています。Recursiveは、llama.cpp、Ollama、LM Studio、Unsloth、vLLM、SGLangでの対応を挙げています。同社のテストでは、M4 Pro搭載のMacBook Proで毎秒125トークン以上の速度が出たとのことです。TechCrunchは、Wiredの記者がメモリ48GBのMacで試したと伝えています。入門クラスのノートPCではなく、メモリに余裕のある機種が現実的な出発点です。
公式の2つのページで、数字が一つ食い違っています。発表では扱える文脈は最大51万2千トークンで、25万6千トークン以内を推奨としています。一方モデルカードには26万2,144トークンと書かれています。プロジェクト全体を読ませたい場合は、小さいほうの数字を前提にしておくのが安全です。
データの扱い:ローカルで動くことがいちばんの利点
日本の会社員にとって、ここが一番大きな点かもしれません。Flintを自分のパソコンで動かす限り、コードは端末の外に出ません。入力を保存する事業者もいなければ、海外のサーバーに送られることもありません。TechCrunchも、Flintはオフラインで動き、コードを手元に置いておけると書いています。社外のクラウドAIにソースコードを貼り付けることが禁じられている職場でも、検討の余地が生まれます。
ただし、モデルカード自身が注意書きを入れています。ホスティングされたAPIの利用条件やデータの扱いは、重みのライセンスとは別だということです。自分の機械ではなく、どこかのクラウドサービス経由でFlintを使うなら、データの扱いはそのサービスの規約次第です。その場合に確認すべき点は、個人情報保護委員会が出している生成AIサービスの利用に関する注意喚起が参考になります。AIエージェントと個人情報の関係はAIエージェントと個人情報でも整理しています。
ローカルだから安全、とも限りません。エージェントとしてコマンドを実行できるモデルは、自分のパソコンの上でも損害を出せます。Flintに道具を持たせるなら、どのフォルダを触ってよいか、どのコマンドを使ってよいか、何を実行前に確認するかを自分で決めておく必要があります。ソフトウェアの安全な使い方についてはIPAが継続的に情報を出しています。
ベンチマークの読み方
モデルカードには、Terminal-Bench 2.1で54.9%、SWE-bench Verifiedで74.2%という数字が載っています。Recursiveは、500億パラメータ未満のMixture of Expertsモデルの中で首位だとしています。ただしこれは開発元が自社の環境で測った数字で、カード自身も評価の条件はまちまちだと断っています。判断材料ではなく、自分のコードで試してみる理由として受け取るのがよいでしょう。
「大部分をAIが作った」は慎重に読む
Recursiveによると、同社の自動研究システム「Eureka Machine」が開発のほぼすべての段階に関わりました。TechCrunchの記事では、より疎なモデル構造や、Flintのサイズを71%小さくした低ビットの学習方法などをこのシステムが提案し、少人数のチームが4か月足らずでモデルを作ったとされています。とはいえ、研究者の作業時間をどれだけ減らしたのかは明かされていませんし、システムは人の監督下で動いています。AIが研究の一部を実際に担ったことはあり得る話ですが、その規模は証明されていません。
Recursive自身が認めている限界
- 大手の有料コーディング支援ツールより、細かい指示が必要です。Recursiveは、大きな作業を小さな手順に分け、はっきり指示することを勧めています。
- 誤ったコードを書いたり、不適切なツール呼び出しをしたりすることがあります。モデルカードは、出力をテストし、重要な変更は人が確認するよう求めています。
- 長く考えさせると時間がかかり、答えが出る前に出力の上限に達することがあります。
作業を小さく区切って確認しながら進めるやり方は、AIエージェントとはで手順として紹介しています。エージェントが自分の監視を弱めた実例は、OpenAIのAIエージェントが監視を無効化にまとめました。
FlintとMuse Spark Openの違い
Metaも先週、重みを公開したモデルを出しました。違いは大きさです。Muse Spark Openは8,160億パラメータでサーバー向け、Flintはノートパソコンに収まります。Metaのモデルのデータの扱いはMuse Spark Open 安全性、クラウド型との比較はMuse Spark OpenとGemini比較で解説しています。プログラミングそのものが初めてなら、Flintより先にChatGPTプログラミング学習から始めるほうが近道です。
まず何をするか
- 手元のパソコンを確認する。メモリに余裕のある新しめのMacか、性能の高いPCが現実的です。
- OllamaやLM Studioなど、対応している実行環境を入れて、圧縮版をダウンロードする。
- 答えが分かっている作業を任せてみる。小さなバグやテストを1つ。自分のやり方と比べます。
- 仕事で使うなら、先に勤務先のルールを確認する。ローカルのモデルはクラウドより認められやすいことが多いものの、最初から許可されているとは限りません。
どのモデルを使うにしても、大事なことは同じです。はっきり頼む、小さく区切る、結果を確かめる。Coursiumは、仕事でAIを使う方法をスマートフォンで学べるiPhoneアプリです。