生成AI活用事例:4つの場面と確認の手順
生成AIの活用事例は抽象的なリストで終わることが多いですが、1つの業務を入力・出力・確認の順で見たほうが分かります。経費精算の分類を例にした手順です。
「生成AI 活用事例」で検索すると、業種別の一覧や抽象的な説明が多く出てきます。実際に自分の仕事で使うときに役立つのは、そうした一覧ではなく、1つの業務を入力・出力・確認の3段階で追った具体例です。道具が得意なことと苦手なことは、作業によって大きく違います。
総務省の情報通信白書によると、何らかの業務で生成AIを使っている日本企業は86.4%にのぼり、前年度の55.2%から大きく伸びました。ただし同じ調査で、業務変革について「組織的な取組はない」と答えた企業も27.0%あります。つまり多くの職場では、会社として決めたルールよりも先に、一人ひとりが自分の判断で使い方を見つけている状態です。
職場でよく使われる4つの活用事例
- 要約する:長い資料やメールのやり取りを、本当に必要な数点に絞る。
- 下書きする:返信メールや案内文の最初の一文を作り、そこから自分の言葉に直す。
- 分類・整理する:問い合わせや経費のような繰り返しの多いデータを、決まったカテゴリに振り分ける。
- 一次回答する:よくある質問に最初の答えを出し、複雑なものだけ人が対応する。
具体例:経費精算のカテゴリ分けを最初から最後まで
月末にたまった経費の明細を、交通費・会議費・備品費などのカテゴリに手で振り分ける作業を例にします。件数が多いと、これだけで30分以上かかることがあります。
最初のつまずきは頼み方です。「経費を分類して」だけでは、AIに判断基準が渡っていないので、カテゴリの切り方がこちらの意図とずれます。うまくいくのは、実際の明細と、使ってほしいカテゴリの一覧を一緒に渡したときです。「以下は今月の経費明細です:[明細を貼る]。各項目を『交通費』『会議費』『備品費』『その他』のどれかに分類してください。判断が難しい項目は分類せず、理由と一緒に別枠で挙げてください。」
この最後の一文が重要です。判断が難しい項目を無理に分類させず、別枠で理由つきで挙げてもらうことで、どこを自分で確認すべきかが最初から分かります。出てきた分類を、金額が大きい項目を中心に元の明細と照らし合わせれば、ゼロから手分けするより確実に早くなります。
使う前に確認しておきたいこと
経費明細には取引先名や個人名が含まれることがあります。会社が導入を把握していない無料ツールにこうした情報を貼り付ける前に、一度立ち止まる価値があります。個人情報保護委員会は、生成AIサービスを利用する際の個人情報の取り扱いについて、事業者・利用者の両方に注意を呼びかけています。
もう一つの不都合な事実は、これらのモデルが間違った内容でも正しい内容と同じくらい自信を持って答えることです。「会議費に分類できます」という一文は、正しいときも間違っているときも同じように滑らかに出てきます。この「もっともらしさ」と「正しさ」の差がどこまで縮んでいるかは、AI Indexが毎年測定していますが、製品発表が示すほど早くは縮んでいません。
生成AIの活用事例で失敗するのは、道具が悪いときではありません。判断基準を渡さず、出てきた結果を照合しないときです。
このスキルの価値
企業の86.4%が何らかの形で生成AIを使っているのに、27.0%が組織的な取組なしという状態は、個人が持つスキルの差がそのまま成果の差になることを意味します。PwC AI Jobs Barometerは、約10億件の求人データから、AIを使いこなせる人材に明確な賃金プレミアムがあることを示しています。こうした人間による確認の重要性は、OECDのAI原則でも一時的な注意点ではなく管理すべきリスクとして扱われています。
月曜日に試すこと
- 毎週か毎月発生する作業で、すでに元データが手元にあるものを一つ選ぶ。
- 元データと、分類やカテゴリの判断基準を具体的に渡す。基準がないと、AIは一般論で埋めてしまう。
- 判断が難しい項目は分類させず、理由つきで別枠に挙げてもらうよう指示する。
- 金額や件数が大きい項目を中心に、出てきた結果を元データと照合する。
議事録を例にした同じ手順の基本はAIの使い方で扱っています。日本語ならではの頼み方のコツはChatGPTの使い方(日本語)に、長文を要点にする手順だけを詳しく知りたい場合は要約AIにまとめています。同じ入力・出力・確認の考え方を、コールセンターの一次回答に当てはめた例はAIコールセンター活用で、広告文の下書きに当てはめた例はAI広告文の作り方で扱っています。メールや社内文書の下書きに絞った具体例はAIライティングとはにまとめています。
会社が把握していない無料ツールに顧客情報や個人名を貼り付けてしまう前に確認しておきたい点はシャドーAIとはに詳しくまとめました。ハルシネーションや情報漏洩といった問題が実際どこで起きるかを、別の業務を例に扱った記事が生成AIの問題点とはです。
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