ブログ · 2026年9月17日 · 8 分で読めます

シャドーAIとは:会社が知らないAI利用のリスクと確認点

シャドーAIとは、会社が把握・許可していないAIツールを従業員が業務で使うことです。よくある場面、個人情報保護委員会の注意点、使う前のチェックリストをまとめます。

見えない利用。許可を確認。匿名化する。

シャドーAIとは、情報システム部門や上司が把握・許可していないAIツールを、従業員が自分の判断で業務に使うことです。会社支給のパソコンで許可されていないアプリを使う「シャドーIT」の、生成AI版だと考えると分かりやすいと思います。悪意があって始まるケースはまれで、たいていは「会社支給のツールでは物足りない」「早く終わらせたい」という理由から、個人のスマホに入れた無料アプリを業務に使ってしまう形で始まります。

よくある場面を考えます。営業担当者が、商談メモから見積もりの説明文をすぐに作りたいとします。会社が契約しているツールにはその機能がなく、個人のスマホに入れている無料の生成AIチャットに、顧客名・担当者名・金額を貼り付けて頼んでしまう。これが典型的なシャドーAIの入り口です。

問題がない場合と、確認が必要な場合

  • 会社が把握し、契約や設定を確認したうえで許可しているツールを使う:これはシャドーAIではなく、通常のIT利用です。
  • 無料版の生成AIチャットに、顧客名や契約金額など具体的な個人情報・取引情報を貼り付けて頼む:入力内容が学習に使われる設定になっていないか、会社として確認できていない状態で使うと、個人情報保護委員会が注意喚起している範囲に触れる可能性があります。
  • 社内に相談窓口や規定がないまま、複数の部署がそれぞれ別のツールを個人で使っている:一つ一つは軽い操作に見えても、会社全体で見ると、どのデータがどこに渡っているか誰も把握できない状態になります。

見落とされがちな点があります。無料の生成AIチャットの多くは、入力した内容を追加の学習に使うかどうかを設定で選べます。しかし、その設定は個人のアカウントごとに行うもので、会社が一括で管理しているわけではありません。従業員がそれぞれ個人アカウントで使っている場合、誰がどの設定にしているかを会社側が確認する手立てがないというのが、シャドーAIが単なる「ツールの好み」の問題ではない理由です。

使う前に自分で確認できる手順

会社の規定が整うのを待つ間にも、個人で確認できることがあります。順番に進めると、判断がぶれません。

  1. これから貼り付けようとしている情報に、顧客名・金額・個人の連絡先が含まれていないか、まず自分で確認する。
  2. 含まれている場合、それらを仮の名前や記号に置き換えても、頼みたい作業が成立しないか考える。
  3. そのツールの利用規約かヘルプページで、入力内容が学習に使われるかどうかを確認する。使わない設定がある場合は、それを選ぶ。
  4. 判断に迷う内容であれば、貼り付ける前に情報システム部門か上司に一度確認する。

具体例:見積もりの説明文を作る場面

先ほどの営業担当者の例に戻ります。弱い頼み方は、商談メモをそのまま貼り付けて「これで見積もりの説明文を作って」と頼むことです。メモには顧客名、担当者名、提示した金額がそのまま含まれています。これで説明文自体はすぐにできますが、顧客の具体的な情報が、会社として把握していない外部のサービスに渡ったことになります。

確認を挟んだ頼み方はこうなります。まず自分で、顧客名を「A社」、担当者名を「ご担当者様」、金額を「ご提示金額」に置き換えたメモを作ります。そのうえで「このメモをもとに、見積もりの説明文の下書きを作ってください。丁寧だが簡潔な文体で。」と頼みます。出てきた下書きに、置き換えた部分を自分の手で戻してから使います。この一手間で、外部に渡る情報の範囲がはっきりします。

公的な資料が示している注意点

個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用に関する注意喚起等で、個人情報を含むプロンプトを入力する場合はそれが利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認すること、本人の同意なく個人データを入力してそれが応答の出力以外の目的で扱われた場合は法に違反する可能性があることを挙げています。注意喚起の本文は、一般の利用者に対しても、入力した個人情報が機械学習に使われて出力されるリスクを指摘しています。

総務省と経済産業省によるAI事業者ガイドライン(第1.2版)は、PwC Japanの解説によると、組織としてAIの利用範囲を把握し、権限を適切に設定することを重視しています。シャドーAIが問題になるのは、まさにこの「組織として把握する」という前提が崩れるためです。

とはいえ、日本企業の側の備えはまだ発展途上です。IPA(情報処理推進機構)の調査では、AIを導入した企業の82.5%が「文書・音声の要約・翻訳・校正」を用途に挙げており、業務での利用自体は広がっています。一方で、総務省の令和8年版情報通信白書(概要)では、生成AIによる業務変革について「組織的な取組はない」と答えた日本企業が約3割弱にのぼり、比較した4か国の中で最も高い割合でした。利用は進んでいるのに、組織としてのルール整備が追いついていない状態が、シャドーAIが生まれる土台になっています。

月曜日に試すこと

  1. 自分が業務で使っているAIツールを一つ選び、会社が把握・許可しているものかどうかを確認する。
  2. そのツールに、これまで顧客名や金額をそのまま貼り付けていないか振り返る。
  3. 次に使うときは、貼り付ける前に置き換えられる情報がないか一度考える癖をつける。
  4. 判断に迷う使い方が一つでもあれば、情報システム部門か上司に確認する。

AIエージェントに個人情報を扱わせる場合は、チャットよりも確認すべき点が増えます。AIエージェントと個人情報で、権限の絞り方を含めて詳しく扱っています。そもそも出力をどこまで信じてよいかという基本はAIの使い方で、AIに任せてよい作業とそうでない作業の見分け方はAIでできることと、できないことで説明しています。複数のツールを比べる際に性能より先に見ておきたい軸はAI比較にまとめました。研修やセミナーでこうした確認の手順を体系的に学びたい場合は、AIセミナーで良し悪しの見分け方を整理しています。

この記事は公表されている資料の要点を紹介するもので、法的な助言ではありません。自社での具体的な判断は、社内の情報管理の担当部署に確認してください。

何を任せてよく、何を確認すべきかは、実際に手を動かしながら身につく判断です。Coursiumは仕事でのAIの使い方を学べるiPhoneアプリで、App Storeで公開しています。詳しくはCoursiumのトップページをご覧ください。

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