AIに取られない仕事:職業ではなく「奪われにくい作業」で考える
AIに取られない仕事を職業名で探しても答えは出ません。奪われにくい作業に共通する4つの特徴と、自分の仕事のどこがそれにあたるかを見極める方法をまとめます。
正直に言うと、「この職業ならAIに取られない」と職業名で言い切れるものはほとんどありません。どんな職業も、実際には性質の違う複数の作業の集まりです。そのなかには自動化が進みやすい作業もあれば、当分は人が担い続ける作業もあります。「取られない仕事」を探すより、「奪われにくい作業」に共通する特徴を知るほうが、実際の役に立ちます。
奪われにくい作業に共通する4つの特徴
- 予測できない物理的な環境での器用な動き:狭い場所での配管の修理や、患者ごとに違う体位での処置など、その場その場で身体を調整する作業。
- 最終的な法的・倫理的責任を負う判断:診断の確定、契約の締結、処分の決定など、結果に対して人が責任を取ることが制度上求められる判断。
- その場の空気や相手の状態を読み取る信頼関係の構築:初対面の相手の不安を汲み取って対応を変える、交渉の場で相手の本音を探るといったやり取り。
- 前例のない問題への対応:マニュアルや過去の事例が存在しない、初めて起きた種類のトラブルへの対処。
逆に言うと、定型的な情報の整理、決まったフォーマットへの入力、既存の文書からの要約や下書き作成は、職業名にかかわらず自動化が進みやすい作業です。同じ職業のなかにも、この両方の作業が混ざっているのが実際のところです。
「職業」ではなく「作業」で考える
同じ職業でも、担当者によって実際の作業の中身は違います。書類作成や日程調整に多くの時間を使っている人もいれば、相手との交渉や現場での判断に多くの時間を使っている人もいます。職業名だけを見て「この仕事は安全」「この仕事は危ない」と判断すると、自分の実際の業務内容とはずれた結論になりがちです。
見落とされがちな点として、同じ「判断」という言葉でも中身は大きく違います。決まった基準に沿って合否を判定するような判断は自動化が進みやすく、基準そのものが曖昧で、最終的な責任の所在が人に求められる判断は、当分は人が担い続けます。
具体例:一つの仕事のなかでも作業によって差がある
事務職を例にします。請求書の内容をシステムに入力する、定型的な問い合わせメールに返信する、会議の議事録をまとめる、といった作業は、AIが下書きを作り、人が確認するという形に置き換わりやすい部分です。一方で、取引先から予期しないクレームが来たときにどう対応するかを判断する、社内の複数部署の利害が対立する場面で落としどころを探る、といった作業は、その場の関係性や過去の経緯を踏まえた判断が必要で、AIが単独で担うのは当分は難しいところです。
同じ「事務職」という職業名のなかに、この両方が混ざっています。自分の1週間の業務を書き出してみると、どちらの作業にどれだけ時間を使っているかが見えてきます。
「この職業は安全か」と職業名で問うより、「自分が今週やった作業のうち、責任を伴う判断はどれだったか」と問うほうが、実際に役立つ答えが出ます。
なぜ「安全な職業」を探すこと自体があまり意味を持たないのか
AIの技術的な能力がどこまで広がっているかは、Stanford HAIのAI Indexが毎年、体系的に追跡しています。ある年に「苦手」とされていた作業が、翌年には状況が変わっていることも珍しくありません。つまり、今の時点で「安全」に見える作業の範囲は、数年単位で固定されたものではないということです。
一方で、OECDのAI原則は、AIが出した結果に対する人の監督と責任を、責任ある利用の前提として明記しています。技術的にできるかどうかとは別に、最終的な責任を誰が負うかという制度上の要請が、人の関与を必要とする作業を一定の範囲で残し続けます。
国内でこうした変化がどう進んでいるかは、総務省の情報通信白書や厚生労働省が継続的に調査しており、どの業務が技術的に自動化しやすいかはIPA(情報処理推進機構)が調査を重ねています。PwC AI Jobs Barometerは、AIを使いこなせる人材に明確な賃金プレミアムがあると報告していますが、これは特定の職業に就いていることではなく、AIが得意な作業と人が担うべき作業を見極め、出てきた結果を確認できる力に対する評価です。
月曜日に試すこと
- 自分の1週間の業務を、思いつく限り箇条書きで書き出します。
- 書き出した作業を、定型的な情報処理と、責任を伴う判断や信頼関係の構築とに分けます。
- 定型的な作業のうち、AIに下書きや整理を任せられそうなものを1つ選び、実際に試してみます。
- 責任を伴う判断にあたる作業では、AIの出力をそのまま使わず、確認と最終判断を自分が担う前提で活用します。
AIがどこまで得意で、どこから苦手になるかの境目はAIでできることで具体的に整理しています。実際に日本語で具体的に頼むコツはChatGPTの使い方(日本語)で、表や集計を任せる場合の確認の仕方はChatGPT Excel活用法で扱っています。AIを作る側の仕事に関心がある場合は、AIエンジニアとはで実際の業務内容を整理しています。
出力を鵜呑みにしないという同じ原則は、AIの使い方でも詳しく扱っています。
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