ブログ · 2026年10月13日 · 7 分で読めます

Muse Wonder 安全性:Metaの新モデルとデータの扱い

Metaが2026年10月12日に公開したMuse Wonderの安全性を、データの学習利用、記憶機能Active Memory、未公開の安全性レポートの3点から整理します。

新モデル。長い記憶。レポート待ち。

先に結論です。Muse Wonderが安全かどうかを、外部から判断できる材料はまだそろっていません。MetaはMuse WonderとMuse Wonder Fullを2026年10月12日に発表しましたが、公式発表には、追加の安全性評価を含む詳しいレポートは「近日公開」と書かれています。データの保存場所や保存期間、日本の個人情報保護法(個情法)での扱いについても、この2つのモデル向けの説明はまだありません。

いま確認できるのは、入力データが学習に使われるかどうか、新しい記憶機能がどう働くか、Metaがどんな安全対策をうたっているか、の3点です。この記事では、2026年10月13日時点でMetaが文書にしている範囲と、まだ書かれていない範囲を分けて整理します。

Muse WonderはMuseアプリとは別物

Metaには「Muse」と名のつく製品がいくつもあり、混乱の原因になっています。Museは9月に米国で始まったエージェントアプリ、Muse SparkはMeta AIを動かすモデル群、Muse CodeはMetaのプログラミング用エージェントです。Muse Wonderは、Sparkより上位の新しいモデルです。名前の整理はMuse Sparkとはにまとめています。アプリのほうの安全性はMuse 安全性で扱っていて、この記事はモデルの話です。

TechCrunchは、Muse WonderをMetaにとって初めての最先端(フロンティア)モデルの試みと伝えています。2つの版があり、使える経路が違います。

  • Muse WonderはMeta Model APIでmuse-wonder-1.0として提供され、コンテキストは100万トークンです。Metaの料金表では、米ドル建てで100万トークンあたり入力4ドル、キャッシュ入力0.20ドル、出力20ドルです。Muse Codeでも使えます。
  • Muse Wonder FullはAPIでは提供されず、Muse Codeの有料プランでのみ使えるとMetaは案内しています。
  • どちらも今後Museアプリに搭載され、まず有料ユーザーから展開される予定です。時期は示されていません。

日本で使えるのか

Metaの資料からは判断できません。発表には国名がなく、APIのページも「expanded global access」とあるだけで、対象国の一覧は載っていません。Museアプリ自体はまだ日本で提供されていないことはMeta Museは日本で使える?のとおりです。APIやMuse Codeで使えるかは、自分のアカウントで確かめるのがいちばん確実です。

入力した内容はMetaの学習に使われるのか

これは使う経路によって変わり、いちばん大事な確認点です。Metaの料金表は、モデルの版ごとにデータの扱いを書いています。安価なMuse Sparkの「contributor」版には「Used to improve our products(製品改善に使用)」、標準版には「Not used to improve our products(製品改善に使用しない)」とあります。

API版のMuse Wonderには、contributor版が載っておらず、標準料金だけです。ただし、Sparkのようにmuse-wonder-1.0の横にデータの扱いが明記されているわけではありません。標準の条件で動いていると読むのが自然ですが、それは料金表からの推測で、Metaの明言ではありません。

注意したいのはMuse Codeです。Wonder FullはMuse Codeでしか使えず、Muse Codeの料金表にはcontributor版と標準版の両方が並んでいます。仕事のコードや社外秘の資料を入れる前に、自分のプランがどちらの扱いなのかを確認してください。個人情報保護委員会の注意喚起も、事業者が個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、入力したデータが機械学習に使われないことを十分確認するよう求めています。プランごとの違いはMuse Codeの使い方で詳しく説明しています。

Active Memory:便利だが、個人情報の扱いは要確認

Muse Wonderの目玉は「Active Memory」です。Metaの研究ブログによると、会話をまたいで利用者に関する重要な情報を持ち続け、いまの作業に関係する内容を呼び出す機能です。

毎回、自分の仕事や取引先、好みを説明し直さなくてよいのは確かに便利です。一方で、気をつける点も変わります。忘れるモデルなら、うっかり入力した一文はその会話の中だけで終わります。覚えることを前提にしたモデルでは、その一文が数週間後に別の作業で出てくる可能性があります。そこで知りたいのは、記憶がどこに保存されるのか、どのくらいの期間残るのか、どう確認して削除できるのか、の3点ですが、Metaのページにはまだ書かれていません。

Metaは、Wonderのモデル群を「許可なく個人情報を共有しないよう」訓練したとも書いています。これはモデルのふるまいについての説明で、データの保存についての約束ではありません。どちらも大事ですが、文書になっているのは前者だけです。AIエージェントと個人情報の関係はAIエージェントと個人情報でも整理しています。

Metaが説明する安全対策と、足りないもの

MetaはMuse Wonderを「これまでで最も整合性の高い(aligned)モデル」と呼んでいます。有害な行為への協力を断ること、悪意のある指示に抵抗すること、化学・生物・放射性物質・核やサイバー攻撃への悪用に対して同社で最も強い対策を入れたことをうたい、そのうえで防御側が自社コードの脆弱性を探す用途には使えるようにしたと説明しています。これらは同社の「Superintelligence Scaling Framework」に沿ったものだそうです。

足りないのは、裏付けとなるデータです。詳しい評価結果は、予告されたレポートに入る予定です。発表当日に詳細なシステムカードを出す企業もあり、Claude Haiku 5.5 安全性ではそれを引用できました。今回は、レポートが出るまで、間違いが高くつく仕事をWonderに任せないのが妥当です。

会社で使うかどうかを決める立場なら、経済産業省のAI事業者ガイドラインが、AIを利用する事業者が確認すべき点の土台になります。

いまできること

  1. 経路を意識して選ぶ。APIとMuse Codeではデータの条件が違います。何を入力するかの前に、どこから使うかを決めます。
  2. Muse Codeのプランを確認する。contributor版なら、入力した内容はMetaの製品改善に使われうるものとして扱います。
  3. 会社の許可なく、取引先や同僚の情報を入れない。会社が把握していないAI利用の問題はシャドーAIとはで解説しています。
  4. 記憶の確認・削除の方法をMetaが説明するまでは、同僚に話す以上のことをモデルに話さない。
  5. 安全性レポートが出たら読む。「Metaがそう言っている」を、自分で判断できる材料に変えるのはその文書です。

新しいモデルは数週間おきに出てきます。そのたびに役立つ力は同じで、データの行き先を知り、返ってきた答えを確かめ、危ない作業は人の手に残すことです。Coursiumは、こうした仕事でのAIの使い方を短いレッスンで学べるスマートフォンアプリです。詳しくはCoursiumのトップページをご覧ください。

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