プロンプトエンジニアリング:結果を分ける4つの要素
プロンプトエンジニアリングは専門職の技術ではなく、毎回同じ4つの要素を入れる習慣です。具体例と、一度で終わらせない直し方をまとめます。
「プロンプトエンジニアリング」という言葉は専門職の特殊技術のように聞こえますが、実際にやっていることはもっと単純です。毎回同じ4つの要素を指示文に入れる習慣をつけるだけで、結果の質はかなり変わります。コードを書く必要はなく、普段の仕事の文章でそのまま使えます。
結果を左右する4つの要素
- 前提:誰のために、どんな場面で使う結果かを伝える。読み手が誰かで、同じ内容でも適切な詳しさが変わります。
- 元になる情報:判断や文章の土台になる実際のデータや文章そのもの。説明だけでは、AIは手元にない事実を埋め合わせます。
- 出力形式:表、3つの項目、文字数など、欲しい形を具体的に指定する。「分かりやすく」ではなく、実際の形を伝えます。
- 判断基準:複数の情報が混在するときの並べ方や、外してよい情報の条件。基準がないと、AIが自分で決めてしまいます。
最初から最後までの例
届いた商品レビュー20件を、改善につながる形で整理する場面を考えます。不十分な指示:「このレビューをまとめて」。結果:好意的な感想と不満点が混ざった一般的な要約になり、どこから手をつければいいのか分かりません。
十分な指示:「以下はレビュー20件の全文です:[レビュー貼り付け]。社内の改善会議で使う資料として、良い点・改善要望・バグ報告の3つに分類し、各項目は一文で、同じ趣旨の指摘は件数も書いてまとめてください。」結果は会議にそのまま出せる形になります。前提(改善会議の資料)、元データ(レビュー全文)、出力形式(3分類・一文)、判断基準(同趣旨はまとめて件数表示)の4つが、最初から指示文に入っているためです。
一度で終わらせない
最初の結果が完璧になることはほとんどありません。ここで指示文を全部書き直すのではなく、気になった一点だけを伝えて直させるほうが早く正確になります。「バグ報告の分類に、改善要望が1件混ざっている。その1件だけ移動して」のように、直す範囲を狭く指定すると、直した箇所以外が勝手に変わるのを防げます。
指示文を毎回ゼロから書き直すのは、4つの要素のどれかが最初から足りていないサインです。直す範囲を狭く指定できるなら、土台はすでに十分です。
出力を使う前の確認
分類や件数は、元のレビュー全文と照らし合わせて確認してください。AIは件数や分類を一見筋の通った形で提示しますが、同じ趣旨かどうかの判断を間違えたまま、もっともらしい数字として出すことがあります。会議資料として配る前に、特に件数の部分だけは元データを数え直す価値があります。
なぜこの手順が必要なのか
AIモデルは、入力された文字の並びから次に来る最も自然な文字を予測して文章を生成しています。ChatGPTの仕組みで扱っている予測と検索の違いの通り、これは正しい答えを探す仕組みではなく、自然に見える続きを作る仕組みです。4つの要素を指示文に入れるのは、この予測の対象を狭めて、埋め合わせの余地を減らす作業だと考えると分かりやすくなります。
それでも埋め合わせがなくなるわけではないため、OECDのAIガイドラインは人による確認を省略可能な工程ではなく必須の工程として位置づけています。
職場での広がり
生成AIの業務利用がどれだけ広がっているかは総務省の情報通信白書が毎年示しており、IPAのDX動向調査も同様の傾向を報告しています。こうした指示文の作り方を含めてAIを使いこなす力に賃金面の価値があることはPwC AI Jobs Barometerが報告しており、AIモデル全体の進歩のペースはStanford AI Indexが毎年追跡しています。
月曜日に試すこと
- 普段の指示文に、前提・元データ・出力形式・判断基準の4つが入っているか確認する。
- 足りない要素を一つ選んで追加し、同じ依頼を出し直してみる。
- 結果に不満があれば、全部書き直さずに気になった一点だけを伝えて直させる。
- 件数や分類など数えられる部分は、元データと照らし合わせて確認する。
この4つの要素を具体的なタスクで練習する入り口としては、AIの使い方が3つの場面と確認手順を扱っています。日本語での基本操作全般はChatGPTの使い方(日本語)、ChatGPTにできることとできないことの境界はChatGPTでできることにまとめています。画像生成に特化した指示文の作り方はAIイラストプロンプト、特定モデル向けの指示文のコツはMuse Sparkプロンプトで扱っています。
こうした指示文の組み立てと確認の習慣をスマホの短いレッスンで練習できるのがCoursiumです。AIの一歩先へ、詳しくはCoursiumについて。