AIが人間を超える:作業単位で見ないと答えを間違える
AIが人間を超えるかは、職業や人間全体で答える問いではありません。すでに超えている作業と、まだ超えていない作業の違い、自分の仕事での見極め方をまとめます。
正直に答えると、「AIが人間を超えるか」は、人間全体で一つの答えを出せる問いではありません。すでに人間を明確に超えている作業もあれば、まだまったく届いていない作業もあります。膨大な文章から特定のパターンを見つける速さでは、AIはすでに人間を超えています。一方で、初めて起きた種類のトラブルにその場で責任を持って対応する判断では、まだ人間に届いていません。「超えるかどうか」より、「どの作業で、どこまで」を見るほうが実際の役に立ちます。
すでに超えている作業と、まだ超えていない作業
- すでに超えている:大量の文章やデータから特定のパターンや誤りを見つけ出す速さ。人間が数時間かける作業を数秒で終える。
- すでに超えている:決まったルールと明確な正解がある競技やテスト(特定のボードゲーム、定型的な試験問題など)での成績。
- まだ超えていない:前例のない状況で、限られた情報から責任を持って判断すること。
- まだ超えていない:相手の表情や場の空気など、言葉にならない情報を読み取って対応を調整すること。
この違いを分けているのは、正解が一つに決まっているかどうかです。正解が明確に定義できる作業ほどAIは強く、正解そのものが状況によって変わる、あるいは最終的な責任の所在が問われる作業ほど、人が担う部分が残ります。
自分の仕事で見極める2つの問い
- この作業には、誰が見ても同じになる「正解」があるか。あるなら、AIが得意な領域に近づいている。
- この作業の結果について、最終的に誰かが責任を取る必要があるか。あるなら、AIに任せきりにできない領域が残っている。
具体例:一つの業務のなかでも差がある
契約書のチェック業務を例にします。決まった条項が入っているか、日付や金額の記載に矛盾がないかを確認する作業は、正解が明確に定義できるため、AIによる一次チェックが人間の見落としを上回ることがすでに起きています。実際にツールに任せる場合の具体的な頼み方は他の記事で扱っていますが、ここで見るべき点は、この種の照合作業では「超える」がすでに現実になっているということです。
一方で、その契約の条件が自社にとって本当に有利かどうか、相手先との今後の関係を踏まえてどこまで譲歩するかという判断は、正解が状況によって変わり、最終的な責任も人が負います。同じ契約書チェックという業務のなかに、すでに超えられている部分と、まだ人が担う部分が混在しています。
「AIは人間を超えたか」と全体で問うと、いつまでも答えは出ません。「この作業には、誰が見ても同じになる正解があるか」と一つずつ問うほうが、今すぐ使える答えが出ます。
なぜ「超えた」という報道を見ても現場の実感と違うのか
AIの技術的な能力がどこまで広がっているかは、Stanford AI Indexが毎年、特定のベンチマークやテストの成績を体系的に追跡しています。あるベンチマークで人間の平均点を上回ったという報道は、そのテストという限定された条件での結果であり、テストに含まれない曖昧な状況での判断力まで超えたことを意味しません。ベンチマークの成績と、実際の仕事での判断力は、別の物差しです。
OECDのAI原則は、AIが出した結果に対する人の監督と責任を、責任ある利用の前提として明記しています。技術的な性能がどれだけ向上しても、最終的な責任を誰が負うかという制度上の要請は別に残り続けます。これが、ベンチマークで「超えた」とされる領域が広がっても、人の関与が必要な作業がなくならない理由です。
国内で確認できる範囲
国内でのAI技術の広がりについては総務省の情報通信白書が毎年、国際比較を含めて公表しています。どの業務が技術的に自動化しやすいかについてはIPA(情報処理推進機構)が調査を重ねており、どの職種でどれだけ働き方が変わるかは厚生労働省の雇用統計が、製品発表よりも正確に教えてくれます。
PwC AI Jobs Barometerは、AIを使いこなせる人材に明確な賃金プレミアムがあると報告しています。これは、AIがすでに超えている作業をAIに任せ、まだ超えていない作業に自分の判断を集中させる、その見極めができる力への評価です。
月曜日に試すこと
- 自分の担当業務を一つ選び、その中の作業を箇条書きで分解する。
- 分解した作業それぞれに、「誰が見ても同じになる正解があるか」を問う。
- 正解が明確な作業は、AIに一次処理を任せられないか試す。
- 最終的な責任が問われる作業では、AIの出力を参考にとどめ、判断は自分が担う。
この見極めを、職業ではなく自分の仕事のどの作業に当てはめるかという視点でまとめたのがAIに取られない仕事です。AIが得意な作業と苦手な作業の境目そのものはAIでできることで整理しています。実際にAIに具体的に頼むコツはAIの使い方で、日本語ならではの頼み方の工夫はChatGPTの使い方(日本語)にまとめています。AIを使う側ではなく作る側の仕事に関心がある場合は、AIエンジニアとはで実際の業務内容を整理しています。
こうした「作業を分解する」「AIの出力を確認する」という2つの力は、Coursiumがスマホの短いレッスンで練習できるようにしています。AIの一歩先へ、実際の仕事に近い練習から始めてみてください。詳しくはCoursiumについて。